ネバーエンディング

終わらない架空の日記をつけています

アルコホリック

 

 

 

 

 

 酩酊。酒には強くない。たったこれだけの文章を打つのにも苦心するほどにアルコールというのは容赦なく心臓を叩くから逆に都合が良くなった。2週間ぶりのメッセージにばくんと肋骨の中身が弾けたので慌てて数量限定と書かれたアルミ缶を手に取ったのだった。およそ色気のない音で少し笑ってしまう。きゅん、とか、どきん、とか、世間で大量生産・流通・消費している擬音はそんな感じだったろう。何はともあれ普段の倍のパーセントを脇目も振らず喉にぐいぐい流し入れたものだから首から上がえらく具合が悪い。血液がどんどん集まる。浮腫み。こうしてふざけていないと理性的な返事ができないのだから不思議なものだと思う。酔っていないときの方が頭のおかしいことを言いがちなのだ自分は。多分。ぽちぽちと静かにバーチャルのキーボードを親指一本で叩く。やっすい文字列。やっすいコミュニケーション。ばかけだ時代になってしまったとアナログの民は思うほかない。とはいえガラケーはすきだった。デジタルじゃねえか。いやはや申し訳ない。

 

 普段よく通る小さなラブホテルの前で急に目眩と嫌悪に襲われてアッと思った瞬間にはアスファルトを派手に汚してしまった夜のことを思い出す。酔っ払いがいらんことばっかり言うのはいらんことばっかり思い出してしまうからで、これはどうしてもランダムな話なので力技でなんとかできるわけもない。仕方がない。何にせよセクシャルマイノリティにとってはセックスという至極当たり前の生物の営みがあまりにもしんどくでげぼっといってしまったのだったが、そりゃあ理解されなくて当然だよなあと自分でも納得してしまう。ここだけの話、愛する相手がどうのと言い争えるだけ華なんじゃないかとか思う、卑屈なので。愛ってのは人間が享受できる複雑怪奇でかけがえのない情動であり、交尾ってのは動物なら誰もが身をやつす生命と切っても切り離せない尊い行為であり、それを忌避するあまり涙とゲロを吐き出しながらごめんなさいとヒステリックに喚き続ける奴はひとでなしどころかいのちを持つ資格もない。断じて自分と似通ったマイノリティ集団に属する人間をそうだと言っているのではなく、あくまで自分という一個人に限った話として。たとえば男の自分が男を好きになってそれを誰かに批判されたとて、愛でこころを満たせる時点で何も恥じることがないじゃんか。ずるい。いいなあ。うらやましいなあ。愛。愛ってなんだろうね。酒を好き放題流し入れてみたところで永遠に答えなんか出ないに決まってる。嫌な話だ。